Juce Gace(ジュース・ゲイス)ことジュリアンは、ストリートでピンズやワッペンを作って遊んでいたところ、玩具メーカーのマイティ・ジャックスの目に留まった。それ以来、お茶目なフィギュアを制作することで注目を浴びるようになったのだ。パリを拠点に活動する彼は、代表作「A Wood Awakening」で、幼少期の象徴であるピノキオを「大人になることのバカらしさ」をテーマに再構築し、その後の作品へとつなげている。玩具デザインに携わる以前に始めた脚本家としての活動とビジュアルアーツを両立させながら、小粋なフィギュアの作風を確立している。
今回 Juce Gace は HBX のホリデーシーズンを記念して、グルートをモチーフにしたコレクターズアイテム「I Am Wood - ゴールデンエディション」をローンチ。HBX ジャーナルでは多方面での才能を持つ彼にインタビューを行い、玩具デザインの歩みの出発点や創作過程、そして子供のころに親しんだキャラクターを再解釈することの意義について話を伺った。
コレクターズアイテムの制作を始めたきっかけは何ですか?
物心ついたときからおもちゃが好きでしたが、その道には全く縁がなくて。文学や脚本の勉強をしながら、いつも遊び感覚で絵を描いていて、ピンバッジやステッカー、服、プリントなどを作って街角に貼ってたんです。そんなときに、とあるおもちゃ屋さんが僕を目に留めてくれて、初めてアートトイを作らないかと提案してくれたんです!子供の頃の夢が叶ったようでした(笑)。
玩具のデザインから完成まで、どのような工程を経るのでしょうか?
他のアーティストの方々ともお話ししてわかったのですが、作業の工程は人それぞれ全然違うみたいです。僕はいつも頭の中にデザインの細かいイメージが浮かんだら、テクニカルドローイングや3Dスカルプティングから始めます。それから、すべてのプロセスを最初に描いたイメージにできる限り近付けるように行うんです。その後は、メーカーと一緒に型や色、仕上げを完璧に仕上げていきます。箱や証明書のデザインにも少し時間をかけてから、いよいよアートトイのリリースと出荷に移ります!
特に思い入れのある作品やフィギュアはありますか?
難しい質問ですね。その時々でリリースする作品が毎回超自信作なので(笑)、今回は「I Am Wood ゴールデンエディション」と言っておきます!僕は細かいところにすごくこだわるので、作品がコレクターの手元に届くまでに最低でも7〜8ヶ月はかかるんです。それだけ時間がかかってくると、この仕事が好きでない限り、飽きたり焦ったり落ち込んだりしちゃいますよ!
脚本、グラフィックデザイン、トイデザインをいっぺんにこなすのは、一体どんな感じなのでしょうか?創作活動をしていて、ある分野が別の分野に影響することはありますか?
まず、疲れますね!(笑)。でも、好きなことに時間を費やせるのはとても幸せなことだと思います。やっぱり情熱が大事ですよね。脚本を書いていて行き詰まったとき、アートトイの制作にかかるとインスピレーションが蘇ってくるのにはいつも驚かされます。他にもありますよ!ある分野は文学的である分野は視覚的ですが、両者とも構造が必要で、観客にストーリーを伝えることが求められます。愛、思いやり、寛容さ、自尊心など、何かを世の中に広めようとしている時点で、結局やってることは同じだなと感じたりもしますね。
いつも「アートを楽しむこと」を目標にされていますが、達成されましたか?どのように実現されたのですか?
そうですね!アーティストの心の奥深くから生まれるアートは、ちょっと仰々しくて厳粛そうに見えるかもしれません。でも、僕はそういう捉え方はしてなくて。僕にとってのアートは、楽しむことそのものなんです。アーティストにとっても、コレクターにとっても、そして作品を見る鑑賞者にとっても言えることです。特にここ数年、世界全体が毎日悲しい雰囲気に包まれていますよね。だからこそ僕はアートを通じて楽しむことにしています。アートは逃避するための手段であり、安らぎを得るための手段であり、より良い場所を作る方法を学ぶための手段なのです。
代表作は「A WOOD AWAKENING」ですが、なぜピノキオで、そして「Wood」という発想はどこから思いついたのでしょうか?
ピノキオというキャラクターは、僕の幼少期の一番のアイコン的な存在で、共に育ったと言えるくらいなんです。ピノキオは本当の人間の子どもになりたいと願っていたし、それは僕も同じでした。不器用だけど根性があって、まさに僕もそうなんです!とぼけた冗談を言った後で、自分と同じように育ったこの愛らしい木彫りの操り人形をどうやったら再現できるか、アイデアが浮かんだんです!この作品は、自分自身の身体や感情を受け入れること、そして自分と同じように悩む他者を許すことを主題にしました。
「幼少期のアイコンのかわいらしさと大人になることの可笑しさ」に触発されたと仰いましたが、その発想の源についてもう少し詳しく教えてください。
子どもたちの方が僕たち大人より賢いんですよ(笑)! もちろん大人の方が成熟してますけど、かといっていつも僕たちが賢いと言えるでしょうか?僕は、純真で可憐な世界から僕たちが生きる現実的な世界へと、キャラクターを連れてきて遊ぶのが好きなんです。僕たちが子供の頃に好きだったキャラクターのほとんどは現実には存在しなかったわけですが、実在してもいいじゃないかと僕は思ってるんです。
ご自身以外にも、最近のポップカルチャーや消費社会では子ども向けのキャラクターを使う傾向があると思いますか?なぜそうなのかも教えてください。
もちろん多くのアーティストが同じようにキャラクターを使った表現をしてはいますが、もうトレンドとは言えないと思います。だってもう40年近く存在するスタイルなんですから!資本主義がそこら中に浸透し、起業家精神が新しい流行となり、ブランドが国家よりも力を持つようになったこの世界に、どうして僕らが閉じ込められてしまったのか。これがアートの新しい主題なんです。アーティストがポップカルチャーのアイコンを使うのは、そもそも最初に資本主義が僕たちの脳を占有したからであって、今それに僕たちは苦しめられているんです。
今回 HBX 限定のリリースを行うことになったきっかけと、これまでの作品との違いについて教えてください。
まず、HBX からコラボの連絡を頂いたときはかなり興奮しましたね。Hypebeast はすごくリスペクトしているメディアプラットフォームなので、「 I am Wood(ゴールデンエディション)」を一緒に考案するなんて、すごいことだと思いました。このクロムメッキの美しさが、ピカピカでカラフルでエレガントで、そしてハイプな作品に仕上げてくれています。クロムの作品を自主制作するのは初めてだったのでかなり苦労はしましたが、輝かしいコラボの実現には必要なことでしたね!
今後はアーティストとしてどのようなことに挑戦していきたいですか?
新しい素材、オリジナルキャラクター、限定イベント、世界中のアーティストとのコラボレーションなどなど、いろいろな形で挑戦していきたいです!ただただ人を驚かせる存在であり続けることが僕の唯一の目標です。それが僕自身の楽しみであり、みんなをハッピーにする秘訣です!