2018年に上海で開催された中国最大級のストリートファッションイベント INNERSECT(イナーセクト) でデビューして以来、〈xVESSEL(ヴェセル)〉の G.O.P. LOWS はアジアのスニーカーファンの中で定番のシルエットとなった。特徴的な脱構築デザインと再構築されたアウトソールは、今やストリートで最も知名度の高いフットウェアの一つとなっている。2000年代初頭〈Triumvir〉でストリートウェアに携わっていたヴァネス・ウーが率いる〈xVESSEL〉は、当初はソフトグッズのコレクションを展開していた。その後、バルカナイズドコルクのハイブリッド構造で G.O.P. LOWS が一世を風靡し、現在に至る。
以来、G.O.P. 2.0 MARSHMALLOW や G.O.P. スリッポンといった異なるモデルを展開。一方オリジナルの G.O.P. LOW は、最近ではカラーバリエーションを増やしたりコラボを発表したりするなどし、2020年には〈Yohji Yamamoto(山本耀司)〉の目に留まりフルコレクションを発表するまでになった。
コラボに関しては HBX も先日〈xVESSEL〉とタッグを組み、デニムツートンカラーの G.O.P. LOW をリリースした。今回は、ヴァネス・ウー本人に〈xVESSEL〉のチームがいかにして成功を収めたのか、どんな困難があったのか、そして新進フットウェアブランドとしての今後について詳しく伺った。
なにをきっかけにファッションの道へ進むことになったのですか?カリフォルニアで育ったことによる影響についても教えてください。
最初のきっかけは、オレンジカウンティのサーフスケートカルチャーとヒップホップダンスシーンに触れて育ったことです。そこでは、パンク・ロック、グランジ、オルタナティブ、グラム・ロック、Run-D.M.C.、パブリック・エナミー、NWA、2パック、他にも Bell Biv DeVoe や Tony! Toni! Toné!、TLC など、たくさんのダンスミュージックが混在していました。あとは、アニメや漫画からも影響を受けました。
20年以上エンタメ業界に身を置くヴァネスさんにとって、スタイルアイコンと呼べるような人はいますか?
マイケル・ジャクソンとプリンスは、ステージでパフォーマンスをするとき、いつも見事な衣装を身にまとっていました。マイケルはアルバム『Bad』の中で、ベルトバックルパンツを履いて今にも殴りかかってきそうな格好でした。そしてプリンスは、いつも奇抜なスーツで際どいところを攻めていましたよね。
俳優、ダンサー、ミュージシャン、そしてデザイナーと、マルチクリエイターとして活躍されていますが、時間配分はどのようにされているのでしょうか。
その時々の仕事の流れに身を任せています。でも音楽やデザインは、インスピレーションを得るために毎日継続的に行っていることです。最終的には、優秀なチームに支えられていますよ。
普段のスタイルと、これまでの変化について教えてください。
ただその日の気分に合った服を着るようにしています。結局のところ、着心地がよくて、着こなす自信さえあれば、どんな服でも格好良く見えるんですよね。
ファッションに欠かせないアイテムは何だと思われますか?
アクセサリーですかね…。僕は家族から譲り受けた小物やビンテージアイテムを愛用しているんです。ストーリー性があるものを選んでいるので、古着のフリーマーケットで買い物をするのも好きです。
2018年に〈xVESSEL〉を立ち上げた後、なぜシューズブランドを始めようと思ったのか、その経緯や当時のビジョンについて教えてください。
僕とパートナーのレオは、もとはアパレルブランドを作りたいと思っていたんです。innersect でデビューしたばかりのころは、帽子、ジュエリー、バッグ、カットソー、パーカー、シューズなど、さまざまな SKU を展開していました。シューズは特に好評で、すぐにヒットしました。そこで、シューズ製作に全精力を注ぎ、お客様のために完璧なものを作ろうと決めたんです。
チームやブランドのクリエイティブプロセスではどのようなことをされているのでしょうか。
クリエイティブプロセスでは、全員がかなりバランスの取れたパートを担っています。時々ミーティングをして、どのデザインが良くてどのデザインがダメなのか話し合います。今はすべてが自律しているので、とてもありがたいですね。
ブランドを立ち上げてから、大きな課題などはありましたか?
転売や偽物が出回るのが本当に早くて、何度も訴訟を起こさなければなりませんでした。でもそれもすべてプロセスの一部だと思っています。ここでも、そういう事態に対処するにあたって本当に良いチームに恵まれて、すごく感謝しています。
〈xVESSEL〉の象徴である歪んだアウトソールと脱構築的なアッパーのデザインは、どころから着想を得たのでしょうか?
まだ誰も見たことのないものを作りたかったんです。とはいっても、自分たちが子供のころに影響されたデザインをキーにしたかった。解体されて再構築された見た目は、ちょうどアートを鑑賞するみたいな感じで、見ていて楽しいんですよね。
〈xVESSEL〉のシューズの中で、特にこだわった一足はありますか?
〈Yohji Yamamoto〉とのコラボで作ったシューズは、自信作です。本当に幸せでしたし、光栄なことでした。今でも覚えているのは、一緒にカラオケに行ったとき、僕はただ彼に〈xvessel〉のシューズをプレゼントしようとしただけなんです。でも彼は僕たちのデザインを気に入ってくれて、しかもその場で彼のために作ってくれと言ったんですよ!これはもう、感謝するしかないですね。彼に見せたのは、メルセデス AMG とのコラボシューズで、着脱がとても簡単なレーシングシステムを採用したモデルでした。
HBX とのコラボのきっかけや、全面デニムのシューズという発想はどこから生まれたのでしょうか?
Hypebeast とは長い付き合いで、あるとき Kevin から HBX コラボのシューズを作らないかと誘われました。それでピンとくるものがあったので、直感に従ったという感じですね。デニムのデザインのインスピレーションは、おそらく過去にデザインしたデニムパファージャケットからきたものです。昔のビンテージデニムをたくさん使って、仕上がりにはとても満足しています。
今後、〈xVESSEL〉やご自身にどんなことが期待できますか?
これからめちゃくちゃクールなコラボを控えているので、最終的な契約に向けて動いているところです。それから最近ではアルバム用のグッズの後に一部の服を再デザインして、より新鮮なルックにしたりしました。デザインへのアプローチは、僕が育ってきたころのインスピレーションを大切にしているものなんです。だから控えめに言ってもすごく楽しいです。