今年初めにリリースされた限定カプセルに続き、〈Entire Studios〉(エンタイア・スタジオ)は新たに "Drop 3" と題したアパレルシリーズで HBX に戻ってきた。
今回のコレクションは、これまでのコレクションをベースに、定番のブランクスウェットスーツ、新しいスタイルのパファージャケット、そして前回のインタビューで触れられたタイムレスなアースカラーの配色など、幅広いラインナップを展開している。さらに、今までにないコンセプチュアルなレディースウェアや、シルエットや質感を引き立てる特殊な素材加工が、新作コレクションに磨きをかけている。着古したような美しさのゴーカー カーゴ、構築的なフォルムのフラッフィー フリース、体にフィットするブリープ ブラとパフィー コルセットなどがその最たる例だ。
Hypebeast は、ニュージーランド出身のクリエイターであるセバスチャン・ハントとディラン・リチャーズにインタビューを行い、彼らのデザインアプローチの特徴である大げさなプロポーションを保ちつつも、誰もが毎日着れるという〈Entire Studio〉のブランド理念を反映した最新コレクションを細かく見ていく。
今回のコレクションのカラー設定のインスピレーションは何だったのでしょうか?
私たちはこれまで、新たなスタイルを強調するために鮮やかな色彩に傾注してきました。色の使い方によってシルエットの見え方を変えられたり、新しい角度から商品を見せたりすることができますから。今後は、ワードローブ全体が長く使えるように、アースカラーやタイムレスな色調を基調としていきます。カテゴリーが細分化されるにつれて、何度でも買い替えられるような定番商品も追加してきました。ですが、シーズンによっては新しく楽しいカラーも常に取り入れていくつもりです。
カラーリングやシルエットのネーミングはどこからきているのですか?
スタイルやカラーのネーミングは、コレクションづくりの段階でのリサーチに基づいています。建築、自然、テクノロジーなど、一般的にファッションに隣接する分野から私たちはインスピレーションを得ています。リサーチとコンセプト作りの過程で、フレッシュなアイデアを生み出し、それを誇張したり、発展させたりします。そして、最終的には各アイテムにふさわしいネーミングにたどり着きます。PFD ジャケットという名前は、"Personal Flotation Device"( パーソナル・フローテーション・デバイス)から着想を得ました。明らかに PFD ではないんですが、巨大なプロポーションに初期のライフジャケットを連想したんです。
エントランス・スタジオ
今シーズンは、過去のコレクションをベースに、コアとなるスタイルやシェイプを繰り返し提案し、新しいデザインコードを取り入れました。Drop 3 では、コンセプチュアルなウィメンズウェアに加え、エンザイムウォッシュのコットンやナイロン、そして責任ある調達のダウンを使用したスタイルが登場します。誇張されたシルエットのボリューム感は、エンザイムウォッシュの質感を生かしたレイヤリングによってさらに強調されます。素材内部のロフトを変形させることなくエンザイム加工を施す方法をメーカーと話し合って試行錯誤しました。この素材はコアアイテムとも共通していて、〈Entire〉が毎日の定番アイテムとして手に入れられるよう、スウェットスーツも充実させ始めました。
「日常性」と「コンセプト性」のバランスは、私たちの理念の中心にあるものです。なので私たちは常に、ブランドのストーリーを伝えるコンセプチュアルな形を背景に、日常的に手に取っていただけるようなアイテムを提案しています。
スウェットセットへの思い入れについて、もう少し詳しく教えていただけますか?
私たちは元からのスウェット好きなので、〈Entire〉でスウェットを扱うようになったのもごく自然な流れでした。シンプルでエフォートレスなスウェットでビシッとカッコよくキメるのは簡単じゃないですよね。それに加えてスウェットはベーシックなアイテムなので、生地の厚みやウォッシュ加工のバリエーションなど、かなり細部にまでこだわりました。これらのアイテムを「Entire Uniform(エンタイアユニフォーム)」として、コアな部分を通年で展開していきます。ユニフォームの成長に合わせて、デイリーユースのアイテムも順次追加していく予定です。スウェットは飽和状態にある市場なので、すべてのアイテムを厳しく吟味しています。「このアイテムは存在する価値があるのか?他の商品と何が違うのか?私たちの価値観に合っているのか?」というような感じですね。私たちの最終的な目標は、すべての人のワードローブにデザインのレベルをもたらして、どんなときでも何度も手に取ってもらえるようなアイテムを作ることなんです。
ゴーカー カーゴパンツはどのようなプロセスでデザインされたのでしょうか?
ゴーカー カーゴパンツの最終目標は、リラックスして履ける普段使いのパンツを作ることでした。日本軍のヴィンテージカーゴパンツからインスピレーションを受けて、様々な素材を試した結果、くたびれたように見せながらもシルエットを上手く保ってくれる、ウォッシュドコットンとナイロン・キャンバスの混紡にたどり着きました。シルエットの誇張は私たちのデザインの核となるものです。なので、元々の研究資料と比べるとかなりオーバーサイズになっていますが、ポケットは全体のプロポーションに合わせているので伝統的なカーゴパンツの機能性を維持することができているんです。
フラッフィー フリースはどのようなプロセスでデザインされたのですか?
シルエットは〈Entire〉の基本中の基本で、私たちのアイテムは衣服や生地の形状を捉えるところから始まっていることが多いです。フラッフィー フリースを作るにあたっては、アーカイブからインスピレーションを受けながらも、一目で〈Entire〉のプロポーションとわかるようなシェルパフリースを作りたかったんです。ボンデッドフリースの素材は一般的なフリースよりも構造がしっかりしていて、硬くなりすぎることなく形を保つことができます。さりげないジップのディテールで機能性をプラスし、日常的に着用できるようにしました。
ブリープ ブラ、ブレード ボディスーツ、パフィー コルセットは、特にフィッティングが難しいシルエットに見えますが、Drop 3 のウィメンズのフィッティングでは、異なるスタイルがすべての人に確実にフィットするよう、どのようなプロセスを踏まれたのでしょうか?
開発段階では、できるだけ多くの人に着てもらうことが極めて重要です。Drop 3 のウィメンズとスイムウェアは、スイムウェアとレディースランジェリーに精通した2人のコントラクターに依頼しました。フィット感に細心の注意が必要な分野なので、きちんとしたものを作りたかったんです。ニュージーランドとロサンゼルスで数えきれないほどフィッティングを重ね、1年半ほどかかりましたが、最終的には全て完璧に仕上げることができました。コレクションは日々成長し続けるので、私たちは専門知識とフィードバックをくれる新たな才能を常に求めています。最終的に私たちが目指しているのは、「Entire」、つまり全体的なワードローブを構築することです。そのためには、作品が完成する前にできるだけ多くの人の目に触れることが大切だと思っています。
今回のドロップについて他に何かコメントはありますか?
Drop 3 は、〈Entire Studios〉が目指す方向性を垣間見ることができるコレクションです。慎重に歩みを進めているので、これまでのリリースは表面を掠った程度に過ぎませんが、私たちはとても精力的に、ビジョンを実現させることに集中して取り組んでいることをお伝えしたいです。