2016年に立ち上げられたHBXアーカイブは、ファッションやストリートウェア界のユニークなアイテムを調達できる場所として知られている。〈Gucci(グッチ)〉から〈Sacai(サカイ)〉、〈Burberry(バーバリー)〉などのブランドまで、これらのアイテムがかつて持っていたストーリーに思いを馳せることがあります。
アーティファクトとは、コレクターが大切にしているもの、いわゆる「宝物」にまつわる思い出を記録することを追求しているの物。今回は、ヴィンテージをこよなく愛するKenji Wong(ケンジ ウォン)にお話をうかがいました。アパレルブランドやヴィンテージカーで知られる彼ですが、今回は彼の幼少期の懐かしさを感じさせる、どんな高級品にも代えがたい父と娘の絆が詰まったアンティークをご紹介。
それでは最初にあなたのお名前と肩書を教えてください。
クリエイティブユニットGrowthRing & Co.とアパレルブランドGrowthRing & Supply(GRS)の創設者兼クリエイティブディレクターのKenjiと申します。
あなたが持っているアーティファクトは何ですか?
90年代に香港の小学生が使っていた机と椅子を模造したセットです。
いつ、どこで手に入れたのですか?
4年ほど前に地元の小学校から回収しました。
なぜ手に入れたの?
2018年、遺産をテーマにした展覧会で作品をデザインすることになりました。そのとき、娘が学習机を欲しがっていたことがきっかけで、小学校の古い机と椅子をデザインの設計図にすることを思いつきました。
大切な思い出が込められているのでしょうか?
展覧会のテーマが「香港の遺産」だったので、地元の伝統工芸士とコラボしてリノベーションしたいと思いました。
そこで、油麻地で80年以上続く銅器の鍛冶屋「炳記銅器」のオーナーに協力してもらい、手打ちの技法で作品を作りました。
銅という素材は、時間が経つにつれて徐々に色が変わっていくもので、それは私がずっと追求してきた美学でもあります。
香港のメッキや研磨の技術が衰退し、炳記銅器のオーナーももうすぐ引退すると言っていた今、私はこの地元の職人技の記憶を受け継ぎ、日々使っていきたいと考えています。
売りたいと思いますか、またその理由は?
おそらく、そうではないでしょう。学校の机と椅子は、素材もデザインも最高級というわけではありませんが、私にとってはかけがえのないものなのです。そして何より、娘と私と、この土地との思い出が詰まっているのです。
次は誰のアーティファクトを見たいですか?
香港の植民地時代の手工芸品を見てみたいです。